トラウマがつくる「4つの心の反応タイプ(4F)」
トラウマによる防衛反応には、心と体を守るために身についたパターンがあります。
この記事では、トラウマの防衛反応として知られる「4つのF(闘争・逃走・凍りつき・迎合)」について、心理教育の視点からやさしく解説します。
―それは性格ではなく、生き延びるための防衛反応―

なんでは俺は、すぐ怒ってしまうんだろう…

どうして、こんなに人に合わせてしまうんだろう。

距離を取りたくなる自分は、冷たい人間なのかなぁ…
こんなふうに、自分の反応を責めてしまったことはありませんか。
トラウマ理論では、こうした反応を
性格や欠点ではなく、「危険な環境を生き延びるために身につけた防衛反応」
として理解します。
それが
Fight(闘争)/Flight(逃走)/Freeze(凍りつき)/Fawn(迎合)
いわゆる「4つのF」です。
| タイプ | よくある反応 | 隠れたメッセージ |
| 闘争 (Fight) | イライラする、完璧主義 | 「強くないと見捨てられる」 |
| 逃走 (Flight) | 常に忙しくする、ワーカホリック | 「止まると怖いことが起きる」 |
| 凍り付き (Freeze) | 引きこもる、頭が真っ白になる | 「目立たず、嵐が過ぎるのを待とう」 |
| 迎合 (Fawn) | 人の顔色を伺う、断れない | 「相手を満足させれば安全だ」 |
これは診断名ではありません。
どれか一つに当てはまる必要もありません。
多くの人は、いくつかを組み合わせながら生きています。
そして何より大切なのは、
どの反応も「あなたを守るために必要だった」ということです。

4つのタイプについて、一緒に見ていきましょう!
🔥闘争タイプ(Fight)―「怒り」が止まらない理由
―怒りで距離を保ち、心を守る―

特徴
- 怒りっぽい、強く出やすい
- 批判的・支配的に見られることがある
- 弱さを見せるのが怖い
- 不公平や理不尽に強く反応する
闘争タイプは、危険や不正を感じたとき、
怒り・攻撃・支配によって自分を守ろうとします。
背景にあるもの
子どもの頃、
怒らなければ守られなかった
強くならなければ飲み込まれた
そんな環境では、怒りは「生存戦略」になります。
本当の気持ち
- 本当はとても傷つきやすい
- 愛されたい、安心したい
- 怒りの奥には「悲しみ」や「恐怖」がある
怒りは敵ではありません。
それは「ここまで耐えてきた」というサインでもあります。
日常でよくある反応の例
たとえば、こんな場面はありませんか。
- 職場で軽く注意されたとき、必要以上に腹が立ってしまう
- 本当は傷ついているのに、強がった言い方をしてしまう
- 相手に主導権を握られると、不安や怒りが一気に湧く
これらは「短気な性格」ではなく、
これ以上傷つかないために、無意識に距離を取ろうとする防衛反応です。
周囲から誤解されやすいところ
闘争タイプの人は、
「怖い人」「攻撃的な人」「感情的な人」
と見られてしまうことが少なくありません。
強い言い方や怒りが前に出るため、
「余裕がない」「自分勝手だ」と誤解されることもあります。
でも実際は、
これ以上傷つかないよう、必死に自分の境界線を守っている状態です。
闘争タイプの怒りは、
相手を傷つけたいからではなく、
「これ以上踏み込まないで」というサインとして現れていることが多いのです。
本当は、
誰よりも傷つきやすく、
弱さを見せることに強い恐怖を抱えている人も少なくありません。
回復のための最初の視点
闘争タイプの回復は、
「怒らないようにすること」ではありません。
まずは、
怒りの奥にある感情があったことを認めること。
怒りは、あなたが弱かった証ではなく、
必死に自分を守ってきた証です。
闘争タイプへ: 「イライラしたら、冷たい水で手を洗って『今、自分を守ろうとしてるね』と実況中継してみて」

職場にいる良く怒っていたスタッフ、モラハラな男性、そういう人たちは闘争タイプだったのかもしれませんね…そう思うと、見方が変わりますね。
💨逃走タイプ(Flight)―忙しさで感情を遠ざける
―動き続けることで、感じないようにする―

特徴
- 忙しくしていないと不安
- 仕事や予定を詰め込みがち
- 休むことに罪悪感がある
- 感情より「やるべきこと」を優先する
逃走タイプは、立ち止まることが危険だった人に多く見られます。
考えたり感じたりする前に、動き続けることで自分を保ちます。
背景にあるもの
静かになると
不安・記憶・孤独感が一気に押し寄せてくる環境では、
「走り続けること」が最も安全な選択でした。
本当の気持ち
- 本当は休みたい
- 何もしていない自分が怖い
- 安心して止まりたい
逃走は、怠けではありません。
感じすぎないための必死な工夫だったのです。
日常でよくある反応の例
たとえば、こんな状態に心当たりはありませんか。
- 予定が空くと、なぜか落ち着かなくなる
- 休みの日でも、何かしていないと不安になる
- 感情の話になると、つい話題を変えたくなる
- 疲れているのに「まだ頑張れる」と自分に言い聞かせる
これらは意志の弱さではなく、
立ち止まることで心の痛みがあふれ出るのを防ぐための防衛反応です。
周囲から誤解されやすいところ
逃走タイプの人は、
「落ち着きがない」「せっかち」「余裕がない人」
と見られてしまうことがあります。
常に動いているため、
「頑張りすぎ」「ちゃんと休めばいいのに」
と言われることも少なくありません。
でも実際は、
立ち止まることで不安やつらい感情が一気にあふれてしまうため、
動き続けるしかなかった状態です。
逃走タイプの忙しさは、
やる気や向上心だけではなく、
心を守るための無意識な防衛反応として現れていることが多いのです。
回復のための最初の視点
逃走タイプの回復は、
「休めるようになること」から始まりません。
まずは、
走り続けてきた自分を否定しないこと。
それは、生きるために必要だった選択だったと、
理解してあげるところから回復は始まります。
逃走タイプへ: 「5分だけタイマーをかけて、何もしない時間をあえて作ってみて」

仕事を掛け持ちして休みの時間がない人や、休みの日にゆっくりすることが苦手で何か必ずやってる方はこのタイプかもしれませんね…
🧊凍りつきタイプ(Freeze)―「何もできない」の正体
―解離によって、心を切り離す防衛―

特徴
- 人との接触を避けやすい
- 不安が強いと頭が真っ白になる
- 行動を起こせず固まってしまう
- 長時間の睡眠、空想、ネット、ゲームに没頭する
背景にあるもの
凍りつき反応は「カモフラージュ反応」「退却モード」とも呼ばれます。
心のスターターボタンがオフになったような状態です。
凍りつきタイプは
「人=危険」という無意識の信念を、最も深く持ちやすいタイプです。
闘争・逃走・迎合が使えなかった子どもは、
解離(心が体から離れて、現実感がなくなること)という方法で生き延びました。
これは右脳優位の防衛で、
感情や身体感覚から一時的に離れることで
見捨てられた痛みや恐怖から自分を守ります。
本当の気持ち
- 本当は人とつながりたい
- でも近づくほど怖い
- 孤独と無力感、深い悲しみを抱えている
孤立は、かつては
とても賢く、安全な選択でした。
日常でよくある反応の例
こんな状態が続いていませんか。
- やらなきゃと思っているのに、体が動かない
- 人から連絡が来ると、返事をするまでに時間がかかる
- 現実感がなく、ぼんやりしてしまう
- 寝ているか、スマホや動画を見続けてしまう
これは怠けではなく、
刺激から身を守るために心が省エネモードに入っている状態です。
周囲から誤解されやすいところ
凍りつきタイプの人は、
「やる気がない」「無関心」「冷たい」
と思われてしまうことがあります。
でも実際は、
感じすぎないよう必死にブレーキをかけている状態で、
心の奥には強い不安と恐怖があります。
回復のための最初の視点
凍りつきタイプの回復は、
「行動できるようになること」から始まりません。
まず必要なのは、
「動けない自分を責めない視点」を持つことです。
動けなかったのは、
あなたが弱かったからではなく、
それが一番安全だったから。
凍りつきタイプへ: 「足の裏が地面についている感覚に集中して、今ここに戻ってこよう」

1人が好きなように見せかけて本当は仲良くしたい、だけど人が怖い…
周りからクールにみられてるけど本当は不安でいっぱい…
🎗️迎合タイプ(Fawn)―「いい人」でい続けた結果
―合わせることで愛着を保つ防衛―

特徴
- 断れない、頼まれると無理をする
- 人の感情を最優先にする
- 自分の気持ちが分からない
- 境界線を引くことに強い不安がある
迎合タイプは、自分を消して相手に合わせることで安全を確保します。
背景にあるもの
子どもの頃、
「役に立つ子」「従順な子」でいることが
愛着への入場券だった場合、迎合は必須スキルになります。
親の相談相手、世話役、感情の調整役を
担わされてきた人も少なくありません。
本当の気持ち
- 嫌われたくない
- 見捨てられるのが怖い
- 本当は大切に扱われたい
迎合は、優しさではなく
生き延びるための選択だったことも多いのです。
日常でよくある反応の例
こんな経験はありませんか。
- 本当は嫌なのに、つい引き受けてしまう
- 相手の機嫌が悪いと、自分のせいだと感じる
- 自分の意見を言う前に、相手の顔色を見る
- 断ったあと、強い罪悪感に襲われる
これらは優しさだけではなく、
関係を失わないための防衛反応として身についたものです。
周囲から誤解されやすいところ
迎合タイプの人は、
「優しい」「何でも聞いてくれる人」
として頼られやすい反面、
自分の気持ちがない人のように扱われてしまうこともあります。
回復のための最初の視点
迎合タイプの回復は、
「はっきり断れるようになること」ではありません。
まず必要なのは、
自分の気持ちが分からなくなった理由を責めないこと。
それは、生き延びるために
自分を後回しにする必要があったからです。
迎合タイプへ: 「返事をする前に、心の中で『本当はどうしたい?』と3秒だけ自分に聞いてみて」

優しくてお人好しと思われている「いい人」も、本当は裏で苦しんでいるのかもしれませんね。
🧩タイプは混ざっていて当たり前―切り替わるのは自然なこと
多くの人は、ひとつのタイプだけに当てはまるわけではありません。
状況や相手によって、反応は自然に切り替わります。
それは不安定なのではなく、
あなたの心が生き延びるために柔軟だった証拠です。
🌱回復のポイント:トラウマと対人反応を理解する
トラウマからの回復で大切なのは、
「性格を変えること」ではなく、
自分がどんな反応パターンを使ってきたのかを理解することです。
人の心はとても柔軟で、
ひとつの反応だけを使っているとは限りません。
多くの場合、いくつかの反応が組み合わさった「混合タイプ」として現れます。
1.混合タイプの対人反応
強いストレスや不安を感じたとき、
人は無意識に「予備の反応パターン」を使います。
「これもうまくいかない」と感じると、
第二、第三の反応へと切り替わることもあります。
🔹 闘争−迎合 混合タイプ―主張と配慮のあいだで揺れる

強い自己主張(闘争)と、相手に合わせる行動(迎合)を行き来しやすいタイプです。
怒りと優しさを、短い時間の中で交互に示すことがあります。
相手のためにしているつもりの行動が、
無意識のうちにコントロールや期待につながってしまうことがあります。
🔹 迎合−闘争 混合タイプ―我慢の限界が、怒りになる

怒りや強い自己主張はあまり表に出ませんが、
内側では感情が大きく揺れていることがあります。
感情のフラッシュバックが起きると、
迎合と闘争の間で心が不安定になることもあります。
🔹 逃走−凍りつき 混合タイプ―疲れ切るまで止まれない

人との関わりを避け、ひとりでいることに安心を感じやすいタイプです。
過労、ゲーム、動画視聴、長時間睡眠などで、
無意識に刺激や再トラウマを避けていることがあります。
安全な孤立を選ぶ代わりに、
生活や人間関係の幅が少しずつ狭くなってしまうことがあります。
🔹 闘争−凍りつき 混合タイプ―強く見せて、内側は孤立

自分から助けを求めることは少なく、
外では感情を抑え、内では強い防衛を保つタイプです。
家庭や職場など、環境によって態度を使い分け、
関わりは最小限、行動は支配的または単調になりやすい傾向があります。
🔹 凍り付き−迎合 混合タイプ―近づきたいけど、怖い

人との距離を保ちつつ、
衝突を避けるために相手に合わせやすいタイプです。
不安が強まると頭が真っ白になりやすく、
自分の気持ちよりも場の空気や相手の反応を優先することがあります。
関係を壊さないために動いているように見えて、
実際には「動けない状態」を補うための防衛として迎合が使われていることも少なくありません。
2.自己アセスメントのすすめ
- 自分はどの混合タイプに近そうか、振り返ってみる
- 日常で「4つのF」をどれくらい使っているか気づく
- 人との距離感・自分への厳しさの位置を感じてみる
正解を出す必要はありません。
「気づくこと」自体が、すでに回復の一部です。
🤍最後に―これは「あなたの弱さ」じゃない

これらの反応は、
あなたを壊すために生まれたものではありません。
かつて
あなたを守るために、必要だった反応です。
だからこそ、
直そうとする前に
まず理解してあげてください。
少しずつ、
本当の気持ちに寄り添ってあげてください。
それが回復の、
いちばん静かで確かな始まりです。
書き手である私の話(静かな自己語り)
※ここからは、少しだけ私自身の話をさせてください。
凍り付きー迎合タイプのイラストが私のイラストであったことに、
お気づきの方もいるのではないでしょうか。
私は凍りつきがベースで、
迎合を足場にしながら生きてきました。
看護師という選択も、
「誰かの役に立てば安全でいられる」
そんな感覚から始まったものだったと思います。
それが迎合だったのか、
回復だったのか、
当時の私は分かりませんでした。
ただ、凍りついたままでは生きられなかった。
だから、私なりのやり方で世界に近づこうとした。
今は、そう理解しています。

あなたは何タイプに近かったですか?
よかったら、コメントやSNSで教えてくださいね!
※この記事は、トラウマ理論や筆者の経験をもとにした一般的な情報提供を目的としています。
診断や治療の代替を意図したものではありません。
強い苦しさがある場合は、医療機関や専門家への相談も大切にしてください。
この記事を書いた人
ほかの記事も読む
コメント